子供絵画展
MamBO
12.01.09 04:47
いま、仕事の関係でイギリスに居ます。
休日の今日、ハリーポッターのホグワーツ魔法学校のロケ地で有名なグロスターの大聖堂に観光に行って来ました。冬のイギリスには珍しい青空の見える良いお天気でご機嫌な遠足になる筈でしたが、思いがけないイベントで泣きながら帰って来ました。
そのイベントとは、大聖堂内で行われていた子供絵画展。どこの子供が描いたかというとパレスチナガザ地区です。パイプオルガンの脇に置かれた"Gaza under Fire"の文字と一枚の絵が、まず私の心臓を射抜きました。オレンジと赤い水彩絵の具で塗られたガザの街の真ん中で大きな瞳が涙を溜めながらまっすぐ私を見つめていました。子供の絵にしてはよく出来ていました。きっと中学生か高校生くらいの絵だと思います。「状況をご理解いただけていますか」と係の女性が声をかけて来たときには、私の目から涙がこぼれ落ちそうでした。そのままパイプオルガンと大天井のホールから離れ、ベニヤ板に貼られた子供たちの絵に見入っていました。
大人が創る創造物は、教会もお寺もモスクもステンドグラスも屏風やふすまの水墨画も、民族が違えば全然違うものなのに、小さな子供が描く絵は民族や文化が違ってもちっとも変わらないのですね。強弱もなく、ようやく持ち方を覚えたばかりの鉛筆をぎゅーっと握りしめて描いたであろう力強い線で描かれた人間、おうち、鳥や自動車。草木や家の大きさもトンチンカンで、手足のバランスや肩の位置なんかもメチャクチャで。違いと言えば時々書き込まれた言葉が、私には解読不能の中東のミミズ文字なのと、正面を向いた人間の目が、くっきりと彫りの深い二重まぶたで描かれていることくらい。そして何枚かの絵には、自分たちの国旗が描き込まれていました。黒白緑の三本線に赤い三角の、日本では「国旗」ではなく「地域の旗」としてしか認定していないパレスチナの旗です。
となりのベニヤ板には、黒く塗られた戦車、戦闘機と赤い炎の描かれた絵が集められています。そのうちの一枚、まだ鉛筆の強弱が分からない子供の絵です、車より大きく描かれた人間たちの上に描かれた稲妻のようなオレンジのギザギザ、その下の人間たちの頭の横に消しゴムで消した二連の八分音符の跡がくっきりと残っているのを見つけました。この子は3人の人間たちの間に一度音符を描いて、その後消したのです。まだバランスも鉛筆の強弱も分からない子供の絵です、消したのに残ったこの音符の跡は、テクニックではないのでしょう。一度は描いたその音符に消しゴムをかけた子供の気持ちを思った瞬間、その場で堪えきれずにドクドクと泣いてしまいました。
その絵画展は、描かれた絵の特徴ごとに大人たちが整理して、「笑顔」「国旗」「兵器」などのタイトルと一緒に纏めて貼られていましたが、最後は「Help」で終わっていました。「助けて」と言われても何をどうすればいいのか全くわからない自分のちっぽけさがつらくて情けなくてまたドクドクと泣きました。
パレスチナを攻撃しているのはイスラエルです。そのイスラエルを支持し、兵器を送り込んでいるのはアメリカです。パレスチナは国連加盟国中126カ国に国として承認されていますが、パレスチナを国家として認めず、「パレスチナ自治区」と呼ぶ国には、イスラエルやここイギリス、アメリカ、そして我々日本も含まれます。私たちの国はアメリカに「思いやり」予算を渡しています。
ほんの今朝までの自分がそうだったように、震災と放射能汚染に苦しむ日本ではこれもやっぱり「遠い出来事」なのかなと思いながら、帰りの電車でまた泣きました。
