SPECIAL SONG 一万人の歌プロジェクト「つよくいきよう」

2012年1月21日に放送されたNHKテレビ番組『ようこそ先輩』の中で
石井竜也が、母校の子ども達一人ひとりと語り合い、
子ども達の言葉を紡いで制作した楽曲が
この「世界の絆~命にありがとう~」です。

初めは堅い表情だった子ども達も
石井が発した「大人も怖かった」という言葉をきっかけに
徐々に心を開きはじめました。
今までどこか触れないようにしてきた「あの日のこと」を
あえて「怖かった」と言葉にすることで
これから未来に向かって生きて行く子ども達の心に
闇として溜まっていた何かを一つ取り除くことができたらならと願います。

番組放送後、全国の学校関係者はじめ
たくさんの皆さんから、この歌の歌詞と楽譜が欲しいという
リクエストを頂きました。
被災地の子ども達はもちろんのこと、
当時のニュースの映像をみて心痛めてしまった子ども達など
全国の子ども達にもこの曲を届けて頂ければと思います。

世界の絆 ~命にありがとう~

作詞/北茨城市立大津小学校6年1組33人
作曲/石井竜也

 

音声提供:
NHK/テレビマンユニオン


JASRAC承諾番号:M1202062453
JASRACマーク

Sekai no Kizuna



We escaped on that day, from our classroom in fear
many friends were crying, it was so cold on the ground,
it was so scary


in moments it seemed to be,  that the whole world was breaking. 
We tried to control ourselves, but we couldn't control our trembling 
it was so scary


right after the earth calmed down, our teacher asked us one by one
made sure we were all o.k. Each and every one of us.
then our families finally came and saved us from the place
once we saw their eyes, we could finally cry


We're all connected in this world
I'm so grateful for my life

Every single breath we breath, is precious air that comes from (earths) trees,
and every sacred day we live, is a present that the earth gives,
I realize now,


our simple ordinary lives, we should appreciate and recognize 
It's the greatest gift of all, we should always be grateful,
I realize now


Our families and our friends are the most important thing of all
Let's cherish every precious moment, and let's live life

people just can not survive alone, and we know we're not alone
This is where we were born, where we still stand,
always hand in hand




We're all connected in this world
I'm so thankful for my life

We're all connected in this world
I'm so thankful for my life

Let's stand together, look at the sky
project the future from our eyes
Cause we were born in this world, and here we still stand.
Let's dream big and wonderful dreams, and believe in these words we sing 
In our heart we hold the power to make our dreams come true


We're all connected in this world
I'm so grateful for my life


福島と茨城の県境に位置する僕の故郷は
今や瓦礫はすっかり片付けられ、
半壊だった家も処分されていき、
着々と“何もない街”になっています。
故郷の原風景が殺伐としていく様子には、言葉も出ません。
ここの子ども達は、この風景を、毎日の登下校で見ているのか・・・と思うと、
胸が締め付けられ、心が痛みました。

俺の母校の小学校には、6年生が33人。
性格は、一人ひとり様々です。
まるで人間の性格の標本のように感じました。
「こんなにも人間って、多様だったっけ?」と思わずにはいられないくらい、
一人一人の個性は、輝き、元気で、まぶしかった。

でも、彼らが一瞬にして凍り付くように
異常に冷静になる瞬間があったのです。

それは『地震』『津波』『放射能』。
この三つの言葉に、彼らはうつむき、口を閉ざします。
これらの「心の奥底の闇」に
彼らは小さな胸を痛め、苦しんでいる事が、手に取るように解りました。

その事については子ども達に限らず、地域の住民の方々まで口を開きません。
それが『あきらめ』なのか『意地』なのかは、初めは解りませんでした。

でも一人一人と話すにつれ、それが何なのかが、やっと解ってきました。
故郷は、「忘れようとする気持ち」と「忘れられないトラウマ」
そして「どうしようもない無力感」に苛まれていたのです。
「考えても、どうしようもない」というところまで、追いつめられていたのです。

・・・・俺はショックでした。

震災は、彼らの中に完全に刻まれてしまった恐怖なのです。

夏も海水浴ができないというのは、この地方の子どもにしてみたら、
目の前のおいしいお菓子を食べられないに等しい事なのです。
子どものいない、天気のいい日のグラウンドは
とてつもなく広く、痛ましい程にまぶしい。
そこで遊ぶ事もままならず、時間制限に縛られた日々。

大人だって、こんな状況、耐えられません。

テレビ番組の企画として、初めは
『個性と一人の可能性』をテーマに
だるまを使った「顔魂」という作品を一緒に作ろうと思っていたのですが、
そんな子どもたちの表情を見た僕は、今、一番大切であろう、
『自分の恐怖と向き合ってみる』にテーマを方向転換することにしました。

子どもは、正直です。
「心の鏡」に「闇」を映すのが怖いのです。
その気持ちは痛い程伝わってきました。
こんなに幼いのに、もう日本中の事や、大惨事での犠牲者を、
自分の事のように考えて心配する、12歳の男の子と女の子。

クラスの全員一人ひとりとゆっくりと語り合い、
そして口では言えなかった心境をノートに書いてもらうことで、
大人からも聞けないような成熟した言葉が集まりました。

暗くて怖かった・・・
机の下にいた時が怖かった・・・
お母さんが、来てくれてありがたかった・・・
家がつぶれたと思った・・・
死ぬのかと思った・・・
10日間も、水がなくて、苦しかった・・・
家族がいてくれてよかった・・・

この33人のために曲を作るという事は、
日本中の子ども達に曲を作るのも同然と思えました。

そんな状況で、こんな俺に心を開いてくれた子ども達の勇気ある行動に、
是非、拍手をしてあげてください。

2012年1月 石井竜也