MIND BBS 〜掲示板〜

坊主頭の女の子。

石井竜也

14.12.17 02:26

そのクリスマスは、家族にとって、特別でした。両親は、長男の余命が、後、4ヶ月である事を、知っていました。少年は、クリスマス・イブの夕刻、自分で、酸素吸入器を、はぎ取ると、「ママ、パパ、ジュディになんか、プレゼントを買ってきたいんだけど・・・頼むから、僕に選ばせて」両親は、止めましたが、あまりの彼の意思の強さに負け、とうとう父親は、「よし、ママは、ジュディを見ててくれ、こいつと一緒に、街に行ってくるよ。」母は、心配で、気が気ではなかったものの「ママ、僕、自分の事、知ってるから、ひょっとしたら、来年は、クリスマスを迎えられないかもしれないんでしょ?・・・だから、ジュディに、・・・・」母親はその言葉に、泣き伏せるのを、必死で我慢しました。涙を隠して、「気おつけてね・・・」と、送り出しました。父の運転する車は、とある、スポーツ用品店の前に、止まりました。急いでおりていく息子を、追いかけるように、「おいおい、ゆっくり・・・」息子は、「パパ、僕には時間がないんでしょ?だから、急がなくちゃ・・・!」そういうと、寒い、駐車場を横切って、お店に、急いで入って行きました。そのすぐ後ろを心配そうな父親が、ついて行きます。「あれ・・・そういえば、お前、、ジュディが何が欲しいのか、解ってるのか?」彼は大きな声で「うん!」と、確実な返事が帰ってきました。それを買って、リボンを、結んでもらい、父親と、男の子は、車に急いで、乗り込んで自宅にひき返しました。その頃、丁度、ジュディが、2階の自分の部屋で、何やら、いたずらをしています。今年6歳になったばかりのジュディは、2階にあるバスルームで何やら、カチャカチャやっています。母親は、おもちゃ遊びをしていると思って、そっとしておきました。やがて、パパとお兄ちゃんが、車で帰ってきました。その時、二階から下りてきたのは、自分で切ったのでしょう。へたくそな丸坊主になったジュディの姿でした。母親は、初めびっくりして悲鳴を上げそうになりましたが、・・・その意味が、母親にはすぐに解りました。涙を、ジュディに見せないように、ママは、「あら、かっこいい!!」その時、寒い空気と一緒に、パパと、お兄ちゃんが、帰ってきました。勢い良く、ドアを開けると、そこには、なんと、自分の髪の毛をがちゃがちゃに切った丸坊主の妹が、ポツンと、立っています。お兄ちゃんは、ぐしゃぐしゃになってしまった、袋のリボンをとって、中からニューヨーク・ヤンキーズの帽子を、取り出しました。そして、おもむろに、ジュディにかぶせてやりました。すると、妹のジュディは、新しい今飼ってきたばかりの、野球帽をお兄ちゃんに、かぶせるために、古くなった、お兄ちゃんの帽子をゆっくりとって、自分の頭にかぶり、新しい帽子をお兄ちゃんにかぶせました。使い古したお兄ちゃんの頭から、帽子を取ると、彼の頭には、抗がん剤の副作用で、すっかり、髪の毛が抜け落ちてしまった、つるつるの頭が見えました。「ジュディ、新しいのかぶっていいんだよ・・」お兄ちゃんが困ったように言いました、その時、ジュディは、こう言ったのです、「お兄ちゃんのがいい!だって、こっちの方が、お兄ちゃんの匂いがするんだもん」父親は、ドアに向かいながら、涙をこらえるのに、やっとでした。母親は、気丈に笑顔でこういいました。「二人とも、同じ帽子で、そっくりよ、流石に、兄妹ね・・・・」でも、その目には、涙がキラキラ光っていました。ジュディは、こういいました、「後は、お兄ちゃんに、あたしの切った髪の毛を、つけてあげるね・・・」お兄ちゃんは、ゆっくり、「あ・り・が・と・う!」二人は、抱き合っていました。アメリカのとある小さな街の出来事でした。

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