ある日の出来事
Smile
18.07.25 07:07
ある日、身体障害者の働く場に通う自転車に乗る若者が、散歩中の私の回りをぐるぐると旋回した。その時、悪意や殺意めいたものではなく、無念を感じました。身体障害者の働く場には、健常者も働いています。ですので、その若者がどちらかは一見して判断できませんが、その若者も言葉では表現できないつらいことを抱えて生きているのだなと思いました。
その施設には20歳の時に失明をしてしまった増田太郎さんというバイオリンを弾く音楽家がきてくれたことがある。そこで働く若者たちと他の楽器も交えてセッションをしていました。太郎ちゃんも含めて本当に楽しそうに演奏していたので、観ていたこちらまで楽しくなりました。
「きっとなんでもうれしいよ」
それが太郎ちゃんが教えてくれた答えだった。
あなたと同じような境遇の人にもしバレンタインのプレゼントを渡すとしたら、どのようなものがうれしいのかな?
という質問に対して教えてもらった答えです。
バイオリンを持ち笑っている太郎ちゃんの写真の右側にはこう書いてある。
ぼくにとっての《あこがれの存在》は、なんと言っても、フランス人ジャズヴァイオリニストのステファン・グラッペリ。ほほえみをたたえ、語りかけるように、自由に、軽やかにスィングしながら、それまで感じていた《ヴァイオリンの限界》を軽々と飛び越えていった、彼の音楽と出会った時の衝撃は、本当にすさまじいものでした。このままいつまでも、彼の世界に包まれていたいという想いと、いますぐケースから楽器を取り出し、彼のようにプレイしてみたいという衝動が同時に込み上げてきた瞬間、ぼくの人生は、新たなステージに入ったと言っても過言ではありません。それから今日まで、たくさんの出会いや響き合いを授かることができました。そして、その日々はいつもヴァイオリンとともにありました。そんな相棒、ヴァイオリンをはじめてフィーチャーして完成させたのが、このアルバムです。あの日ステファンのヴァイオリンが、新たなステージへの扉を開いてくれたように、このアルバムとともに奏でる世界で、さらなる可能性を広げ、たくさんの《希望の景色》を感じることができると確信しています。そして、ここに収めた曲たちが、聴いてくださる方々の毎日を少しでも彩り、潤し、あたためながら、ずっと寄り添っていけたなら、こんなにしあわせなことはありません。これからの毎日が、たとえ、どんなときも、《希望》とともにありますように。
出会えたことに感謝を込めて。
最後にOがハート型のローマ字で書いた太郎ちゃんのサインがありました。
太郎ちゃんは音楽を通して聴いてる人を癒したい。私は目の見えない人が困っていることはどんなことかを具体的に聴きたい。
してあげたいことと、してほしいこと。想いはすれ違う。わずかな時間でしたが、小さな小さなコンサートはとても楽しかった。率直にしあわせでいてほしいと感じたひとときでした。
とても失礼な質問だったのですが、わからないことを快く教えてくれた増田太郎さんには感謝しています。
