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作品 アンドロメダを救うペルセウス の解説

koki

18.08.13 18:22

作者 ヨアヒム・ウテワール[1566-1638]
作品 アンドロメダを救うペルセウス(1611年)
油絵、カンヴァス180×150
署名、年記あり


ユトレヒトの画家ヨアヒム・ウテワールによる《アンドロメダを救うペルセウス》は、さまざまな観点から論ずることのできる作品である。まず、この作品は、17世紀初頭になってもなお継続していたオランダ・マニエリスムを例証するような特徴を具えている。同時に、北方絵画において、神話主題のレパートリーがいかに活気を帯びていたかを物語っている。また、自然主義と人工性が混在するウテワールの作品の特徴を示す好例でもある。さらに、この絵は、異国の風情漂う豪華な品々を所有することへのオランダ人の誇りを明白に具現化するものでもある。
ウテワールが選択した構図は大胆である。最前景では、巨大な女性裸体像が画面の天地の長さすべてを占める一方、貝殻、頭蓋骨、人骨からなる、信じられないほど見事な集積物が所狭しと散らばっている。その向こうでは、龍と英雄の戦闘が繰り広げられ、背景には、どちらかと言えばフランドル風の青みを帯びた夢幻的な風景が広がっている。画家は明らかに、古代ローマの詩人オウィディウスによる『変身物語』の中の「ペルセウスとアンドロメダ」という偉大な古典的主題の演出の刷新を図るろうとしている。痛ましい成行きから怪物へ与えられることが約束された美しいアンドロメダを救い出そうと、有翼の馬ペガサスに跨ったペルセウスは中空に浮かんでいる。画面左の後景に姿を覗かせる王女の両親は、この若い戦士の働きに報いて娘を与えることになる。
貝殻学はここに、格好の研究領域を見つけるだろう。ウテワールが描き出した貝殻は、実際に存在するものであり、精緻な観察に基づいている。そして、明らかに、この精緻な観察によって、画家は貴重な貝殻に特有の真珠のような光沢を湛えた色調を画面全体に与えることになった。とりわけ、アンドロメダの肌の色には、青みがかった鉛色と薔薇色と灰色と絶妙な混合が見られる。これらの貝殻は、オランダの船乗りたちが世界周遊の旅から持ち帰ってきたものであった。17世紀の大半にわたって、オランダが海の覇者であったことは、歴史的事実であり、オランダの画家たちはその恩恵に与った。
さて、「科学革命の時代」において、超自然的な物語の挿絵を主題としたこの絵画をいかに解釈すべきか。ふたつの論点を提案することができるだろう。ひとつは、絵画の伝統に関係している。つまり、ウテワールが、古典文化の偉大な代理人たるルネサンスの芸術家たちの系譜の中で制作していたということである。もうひとつは、絵画をほかから孤立させて理解するのは誤りであるということである。この種のイメージは、インドや南米から帰国した人々がしたためた旅行記に見られる多数の挿絵に登場する伝説上の怪物の姿を彷彿とさせる。ペルセウスが闘う龍は、イエズス会の修道士たちが伝播させていた異国の動植物を集めた一群の書物の中に見出すことができるだろう。

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