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貝殻学

koki

18.08.14 17:00

作者 アドリアーン・コールテ[1665頃-1707以降]
作品名《5つの貝殻》
1696年
油彩、紙(板に貼付)
15.5×22cm
署名、年記あり


17世紀のオランダでは、画家たちの貝殻への関心は、アルドロヴァンディやベスラー、ゲスナーのような碩学の一連の研究に続く蒐集家たちの熱意と歩調を合わせている。16世紀、彼らはその研究テーマとして貝殻学も含めていたのである。このような理由から、画家たちは貝殻学に精通するようになっており、西インド諸島と東インド諸島から、ヨーロッパの二大開港アムステルダムとロンドンにもたらされた多種多様な貝殻を描写した。ルーメル・フィッセルが著した『寓意図像集』(1614)によれば、貝殻の蒐集は、莫大な利益をもたらす市場を形成するほどであった。こうして、愛好家たちは、彼らの珍品陳列室を飾るため、貝殻の標本とともに、それらを描いた絵画を探し求めた。
アドリアーン・コールテの静物画は、北部ネーデルラントに伝統的な貝殻を描いた小品、とりわけバルタザール・ファン・デル・アスト(ミッデルブルフ、デルフト、ユトレヒトで活動、1657年没)の作品と密接に結び付いていた。貝殻だけをモティーフとした静物画と言えば、レンブラントが1650年に制作したエッチング《貝殻》やヴェンセスラウス・ホラー(1607-1677)による38葉の版画シリーズが思い浮かぶが、オランダの静物画のモティーフとしてあまり一般的なものとは言えない。
1696年から1698年にかけて、コールテは貝殻の小品を何枚も紙に描いている。本作品は、おそらく、ルーブル美術館に所蔵される別の1点の対作品として制作されたと思われる。双方とも光源を画面左にとり、また、テーブルの縁も呼応し合うように構成されているからである。寸分の無駄もない構図は、まさに紙一重で奇妙にも思われるほど禁欲的であり、亀裂の入った石の縁が画面と完全に平行に配置されている。その石の上に南国の海で採取された5つの貝殻が載せられているが、その幾つかはカリブ海の原産で、たとえば、奥の右はガクフボラ、手前右端はクロボシベッコウバイである。それらの貝殻の多様な形状、色、構造、外観、大きさなどがよく見えるように、どこも重なり合わないよう配慮して並べられたように見える。正確な技法、とりわけ仕上げと、凝った描き方によって、貝殻は完璧なる珍品へと仕上げられ、性的意味合いや現世の富の虚しさの暗示といった、よくある象徴主義は剥ぎ取られている。

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