戦争画について
KABE
18.08.16 16:00
作者 アダム・フランス・ファン・デル・ムーレン
[1632-1690]
作品名 《ライン川を渡るルイ14世の軍隊》
1672年頃
油彩、カンヴァス
49×111cm
ルイ14世によるライン川越えは、1672年6月12日のことであった。これは王の軍事的快挙のひとつで、当時の人々の目には他のヨーロッパ諸国に対するフランス軍の優位を象徴するものに思われた。この出来事はルイ14世の武勲の中で、物語、歴史、メダル、絵画、彫刻などとして、最も多く叙述され、表現されたもののひとつである。12万人の軍は、ローマ帝国以来、ヨーロッパで最大の動員であった。ルーブル所蔵の作品には画家自身の手になるヴァリエーションが幾つかある。
フランドルの画家で、ピーテル・スナイエルスに学び、シャルル・ル・ブランとともにパリで仕事をしていたアダム・フランス・ファン・デル・ムーレンは、1670年代に、「征服王の画家」と名付けられた。彼はオランダ戦役に同行し、数多くの戦場でのクロッキーや記録を残し、それを基に、アトリエでこれらの軍事的な企てを表現する多くの絵画を制作した。
この作品は、元々ショワジー城の収集陳列室にあった全20枚の作品からなる連作の内の1点である。将軍たちに囲まれた騎上のルイ14世が描かれているが、遠景ではフランス軍がライン川をすでに渡っているところであり、また王家の大砲は、火を噴いている。賢明な忠実の記録者として、ファン・デル・ムーレンは王を前景に出し、パノラマ構図で展開する背後の戦闘行為に比べて高い位置に描かれている。「凱旋将軍」ルイ14世のポーズは、すでに実現途上にある事柄を命じているように見え、王家の意志の力をを示している。だが、仮に戦場での戦いの暴力が完全に眼に見えるようになっていたとしても、いかなる恐怖や戦争の告発も伝えることなく、逆に出来事を英雄的に語る手助けをするのみである。