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ルイ14世のコレクションについて

pale orange

18.08.17 08:00

参考にする絵画の作者 アブラハム・ミニョン
[1637-1679]
作品名 《ジョウビタキの巣》
1670年頃?
油彩、カンヴァス
82×100cm
署名あり


アブラハム・ミニョンはヤン・フィットゾーン・デ・ヘームに学んだ静物画家で、優れた技法を具え、ひしめき合うような細部描写にもかかわらず確固とした構図の意識をもち、光の効果への関心の高さ(光沢、明暗の対比)を特徴とする。ミニョンは花の絵を得意とし、《ジョウビタキの巣》は、この領域で彼が到着した質の高さがどのようなものであったかを教えてくれる。質の高さは当時でもよく知られており、たとえばヤン・ファン・ハイスムのような他の画家も高く評価していた。
時折有効に作用する解釈や特定の意味に還元しようとする考え方にもかかわらず、静物画の象徴主義は微妙な主題である。ここでは物質的な腐敗の観念は死せる動物の形を通して見出し得る。一見したところ被造物(動植物)の美を本題としているように見える描写の中心部に、地上のものの虚栄というテーマが入り込んでいる。
アブラハム・ミニョンか描いた本作品は、作品の流通や収集という現象を示す点で興味深い。ベリンゲン侯爵ジャック・ルイ(1651-1723)は、17世紀末から18世紀初頭にかけて、騎兵隊員としてフランス王国に尽した有能な軍人だが、彼はまた銅版画や絵画への関心が高く、「偉大な世紀=17世紀」の収集史において著名な人物でもある。彼が収集した版画群は、フランス国立図書館の版画コレクションの一部を成している。おそらくフランドルの戦役の頃に、彼はピエール・ミニャールに肖像画を描かせ、またさまざまな絵画を何点か購入している。詳細な状況は明らかではないものの、《ジョウビタキの巣》は、この時の購入に含まれていたに違いない。本作品はルイ14世のコレクションに収まった。したがって、侯爵の息子は父親のコレクションすべてを相続したわけではないということになる。
宮廷社会における美術作品の流通は、非常に意義深い。軍人であるベリンゲン侯爵は、騎兵隊長としてその職を終えた。美術作品を寄贈して王の庇護を得るという考えは、立身出世のために行使し得る戦略のひとつと見なされていた。宮廷内での出世争いにおける寄贈とそれに対する返礼の重要さは、充分に評価されていない。本展出品作中のフランス・ポストの作品も、これと同じく寄贈によってルイ14世のコレクションに収まっている(こちらの寄贈者は外国の王侯である)。

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