MIND BBS 〜掲示板〜

お化け、すきですか?

石井 竜の芯

23.09.18 06:34

つい2〜3日前でしょうか?ぼくはひとり、なにかと細かな作業が滞っていましたので、それら細々したことをまとめておりました。ふと、机の下が、寒いのです。ぼくの部屋は、一応声のために、体が冷えてしまう程の室温にはしていません。よって、下半身だけが寒くなるといったことは、今の現在までなった事がないのです。だから、尚更、薄寒くなった机の下に敏感に反応したのではないか?・・・とも思うのです。その寒さは、冬に近かったと記憶しています。冷え冷えとした空気がゆっくりと流れ込んでくる感じは、まるで、ドライアイスの煙が地面を這って、机の下に溜まっていく感じに似ています。ここで不思議な現象がありました。いつもはスイッチを入れたら、絶対に点滅などしないデスクライトが点滅し始まったのです。ぼくは何かの作業を机の上でするときには、精神の集中も込めて、他のライトは全て消しておりますので、そのメインライトの点滅には、なにか不吉なものさえ感じていました。恐怖というのはだんだんと、心の中に広がっていくという人がいますが、その時、家にいたのはぼくひとりだったので、「それ」に気がついた時の驚きと恐怖は半端ではありませんでした。よく恐怖映画に出てくる、狂ったような悲鳴など、いざとなったら出ないものです。自分でも、ビックリするほど、すべてがスローモーションのように進行していきます。こういう場合、身体が動かなくなる現象や、もちろんおどろおどろしい音楽も流れません。全てのオカルト映画のような演出などないのです。あるのは、ただの暗闇と、無音です。・・・しかし、この二つが両方くることを想像してください。体が冷え始め、照明の点滅のスピードが遅くなって行き、普段聞こえる町や風や雨の音など、一切がなくなった部屋に一人いる自分。机の下を見れますか?・・・とてもじゃないですが、このシチュエーションで自分の机の下を覗ける勇気のある人はいません。この静寂を何かの音が紛れ込んできます。その音は、着物の衣擦れの音・・・そして、たぶん女性の太い声、または声がかすれて弱々しくなった読経のような、5〜6人の平坦な念仏のような声です。徹底的な室温の低下と無音の中、聞こえる衣擦れの音と掠れ声のようなお念仏。これだけで気絶する人もいると思います。とうとう数分後・・・いや、10分近くはあったと思いますが、この点滅さえ消えてしまったのです。俺の背中とひたいには冷たい汗が流れていました。体は寒いくらいの体感なのに、冷や汗で消化?汗をかいていることに自分の恐怖は一段と、リアルなんだと感じました。この暗さではもう、机の下に何が起こっているのかを見てみる勇気はとっくになくしていました。そこでぼくが取った行動は、身体を出来るだけ早く机に押し付けて、下を確かめないように・・・いや、正直に言いましょう、机の下から何かが現れてこないように、力一杯、胸の下あたりで食い止めてでもいるように、押しつけていたのです。それでも、鳴り止まない何者かがいると言う実感と、お経のような平坦な低いお経のような声。手は寒さと恐怖で「器用」には動かせません。そして最後の審判のように、文章を打っていたコンピューターがシャットダウンしたのです。もちろん、部屋は尚更暗く、陰湿な空気に飲み込まれて行きます。ぼくは、そこで机に押し当てていた胸の中心に、何か違和感のようなものを感じました。しかも、その違和感は、単にきているものが挟まっているなんて錯覚ではないのです。キツキツの机と胸に直接感じる、人の手のような感触・・・思わず驚いて胸の辺りを見てしまったぼくは、それを見たことに、本当に後悔と驚愕の二重恐怖を味わうことになりました。ぼくの胸にギチギチに押し当てているまさにそこに、灰色に変色した、濡れた指が捻り込まれているではないでしょうか。ぼくは必死にその手が机の上にまで伸びないように、必死の攻防をしたのですが、あのお経が力を入れるたびに、耳の中・・・いや、心の中に直接にでも響くように、大音響になるのです。指全体が、割り込んできた時のその手の強さたるや、とても大の男が必死に机に挟み込んでもゆっくりと、長い指をにゅにるゅると、ねじ込んで来るではありませんか。この手の持ち主がこの世のものではないことに確信した事と、下にいるこの人物の見かけまでも想像が付くような皺くちゃの灰色と茶色が混ざったような指。すると、今までずっとあそこまで捻り混んできた指があっという間に机の下に戻って行くのです。ねじ込まれるのも恐怖なら、一瞬で下に引っ込まれるのもこれまた恐怖です。相手は次の手を考えたに違いないからです。今度は後ろ下?横か?と汗まみれのぼくは、暗く何も見えない部屋をより注意深く視線を動かしていました。その間も長いお経のような嗄れた声は止まりません。そして今、次の瞬間、ぼくの両足首を間違いなく、あの手が、力一杯に握ったのでした。脚の自由が無くなることほど恐怖はありません。つまりは「逃げられないぞ!」という相手の意思表示の最たる表現だからです。薄れゆく記憶の中でいきなり、耳元で聴いた言葉は「連れて行くぞ・・・」という言葉でした。    続く

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