被災者に関心向け続けて~新聞記事より~
いちじく
11.11.21 00:14
11月17日の夕刊に掲載されていた記事です。
(抜粋)
東日本大震災から8ヶ月が過ぎた。復興への道のりは遠く、被災地はこれから厳しい季節を迎える。阪神・淡路大震災を経験した、神戸市中央区で開業する精神科医、小林和さんは、4月以降、何度も被災地を訪れ、被災者の心の支援にかかわっている。小林さんに、被災者の心の軌跡や支援へのまなざしはどうあるべきかを聞いた。
「被災者は今、『幻滅期』と呼ばれる心理状態にあるようです。」災害心理学によると、災害発生から時間とともに、被災者の心理状態に特有の変化がみられるという。災害直後のどうしたらよいかわからない数日間(ぼうぜん自失期)を過ぎると、みんなで助け合おうという連帯感が高まる時期になる。これを「ハネムーン期」という。「ボランティアも大勢駆けつけ、みんなで復興できると希望に燃えていた。けれど続かない。」先の見えないやりきれなさ、いらだち。それが怒りとなる。その時期を、「幻滅期」と呼ぶ。
被災者は家族や親しい人を亡くしただけではない。思い出や町の景観などさまざまなものを失った。そうした喪失体験からどうすれば回復するのか。小林さんは、アメリカの精神科医エリザベス・キューブラー・ロスが行った、臨死患者の心の変遷を研究した中にそのヒントがあるという。ロスは、現実を受け止めていく心のプロセスには「否認」「怒り」「取引」「抑うつ」「受容」という5段階があると説く。最初は事実を認めたくない「否認」。次に「なぜこんな目に」という「怒り」。そして、神仏やあまたの感情を駆使した取引で現状を受け止めようとする「取引」。さらに「抑うつ」を経て、「受容」までたどり着く。「今は怒りから取引、そして抑うつの段階です。失ったものの悲しみをしっかり受け止められないと、次のステップへ進めない。」その中で立ち直りの早い人とそうでない人の格差が出てくる。そのような「幻滅期」は2年ほど続くという。
被災者への支援のまなざしはどうあるべきなのか。「見捨てられ、置き去りにされていると感じることほど生きるエネルギーをそぐものはありません。人々が関心を向け続けることが大切。復興の時まで関心を向け、何らかの形でかかわり続けるとき、人のつながりが被災地に生きる希望を生み出すでしょう」
災害支援者ストレスほっとライン
「災害の際は支援者にもストレスが生じる」と小林さん。
「支援者がストレスを抱えていては、被災者への支援が滞る」と考え、「災害支援者ストレスほっとライン」を日本精神神経科診療所協会主催での解説にこぎつけた。
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