原風景の偉大さ。
石井竜也
12.02.02 23:00
人間には、どんなに転々とした人生であっても、しっくり来る場所というものが存在するのです。そこは、心が癒されて、意地悪もされたけど、忘れられない温かさと包容力を持っている場所。父親や母親とも違う、ほろ苦い記憶の場所。そういう所が貴女の原風景なんです。人間は、幼少時代と、少年期の記憶は絶対に死ぬまで忘れないものです。そのくらい自分自身にしみ込む風景や人情が色濃く感じられる場所。それはまさしく、貴女自身の精神構造そのものを構築している大切な聖域なのです。「その坂道で自転車ごとスっ転んだ」とか「海の見える岬が大好きで、失恋するたびに、そこで泣いていた」とか、「友達とウマが合わず、一人で散歩した誰もいない畑の一本道」とか、「いじめられて、悔しくて、ずっと、家に帰れなくて、隠れていた、お社の中」とか、「幽霊が出るという、体育館の道具置き場」とか「母親に𠮟られて、ふてくされて、蹴っ飛ばした電信柱で骨折した」とか「どうも、好きになれない、気のいいおじちゃんが住んでいた電気屋さんの裏手の路地」とか・・・・数え上げたらキリがない。そういう一つ一つを人は「情緒」と言うんですよ。全てのアイデアや、ロマンスまでも、こんなたわいもない記憶の端っこから、湧き出てくるのが人間の心なんです。・・・だから、嫌な思いも、良い思いも全て兼ね備えた場所だからこそ、そういう場所を、人は「ふるさと」というんですね。そういう場所を失くされた皆様の心を、少しは解るつもりでおります。寂しい物ですね。でも、ふるさとは再生します。次の世代にとってみれば、まさにこれから作り出す皆さんの街が原風景になるのですから・・・。元気を出して下さいね。