こんな青年がいます。
石井竜也
12.10.19 05:16
多分、彼は、オーストラリアの方だったと思います。その青年は、生まれつき両手両足がなく、子供の頃から、絶望と戦う事だけで、生きてきたようです。友達も作らないようにし、馬鹿にされているのも聞かないように逃げるように生きていたそうです。ところが彼は、ある日に気がつきます。このままじゃ、折角、生まれてきた自分が、もったいない。それに、こんな自分にでも、支え続けて愛情を傾けてくれている人たちに、申し訳がない・・・とね。14歳、彼は、一念発起して、一人での生活を始めます。体中傷だらけになりながら、歯を磨くだけでも、彼にとっては、40キロ・マラソンと同じくらい大変なのに、それでも、彼は、周囲の反対も押しのけ「一人暮らし」を続けたのです。それは工夫の連続でした。髪を溶かすタイミングと工夫、シャワー、Tシャツでさえ、宿敵に見えた事でしょう。27歳になった彼は、もう殆どの事を自分で出来るようになりました。そして、現在、彼は、世界中を巡って高校生や思春期の子供達に、自分の身体と人生を、身を以て語る「人生の語り部」として活動しています。講演の最後に彼が必ずする事があります。そのくだりはこんな言葉から始まります。「皆さんも、転ぶときがありますよね?」全員が『うん』とうなずく。彼は、そこでこう言う「僕がもし、転んだら、起きられるとおもいますか?」と・・・。その場の全員が、ガヤガヤとざわめきだす。その時を狙って彼は、わざと、舞台上で転ぶのです。そして、転んだまま、こういう「この状態で、立てると思わないでしょ?・・・最初は僕もそう思った、だって、こうなるんだよ」と、何度も何度も、汗だくになりながら、彼は、七転八倒しながら、のたうちまわる。会場中が「もう、いいから、やめて!」と心で叫んでいるような光景です。しばらくして彼は、小さなタオルのくるんだような道具を、口で運んできた。全員が、かたずを飲む。一瞬、マジックの様に、そのタオルの固まりに頭をつけたと思ったら、一瞬にして、立ち上がる!会場中からの熱い拍手・・・その中で彼は静かに話始める。「君たちには、拍手をする手がある、僕にはその手も、足もない。こうやって、立ち上がるために、何百回と転んだ。それでも出来ずに、又、何百回も転ぶんだ。無理だろうと思っても、又、何百回も起き上がれるまで、続けたんだ。ただ起き上がるという動作だけのためにね・・・」会場中が涙に包まれる。青春期の彼女や彼らにとって、悩み多き時期にあるせいもあって、彼らは、その行動力に、感動するのだろうね。そうして、最後にシンプルな言葉を投げかける「君には、出来る事が沢山ある。僕がここに来た理由は、たったそれだけを、伝えるためなんだ」会場を出る時、全員が、彼に抱きつき泣いている。それはもう、哀れみなんかじゃなく、人間の可能性を見せつけられた感動からの涙だった。彼は今も、世界中の高校や小学校で、講演をおこなっている。そして、彼は、抱きしめられたら心の手で抱きしめて返すのだ。既に、彼には、手も足も必要のない物にさえ感じる光景だった。一人の人間のする事は、大きいね。