今年も本当にありがとうございました。
石井竜也
12.12.30 00:49
アーティストといっても、人の子。きれいごとだけで、この世は生きて行けないし、また、俺たちの仕事には、いろんな思惑が絡んでくる事もあったりして、なかなか、純粋に物事を考えて実行していても、虚飾の延長と受けとめられやすい。だけれども、そもそも芸術なんてものは、その時代に受けとめられなくて当然。未来に対して行っている行為や理念が、今の現代の人々に広く受けとめられる事を考えていたら、やっていけなし、やるべきではない。現代に生きる人々には、ある意味での指針や感動を、そして未来に託すメッセージは、もっと複雑で、彼らが判断してくれるだろう。芸術とは本来そういうものだ。こういうと、又意地悪く、「負け惜しみだ!」なんて言われそうだが、この事は歴史が証明している。その時代において入りきれない芸術は、はみだし、受けとめられない。作る方の意図が十分に伝わらなければ、芸術とは言わない。作品が芸術として、進化していくには、それなりの時間と、人々の成長が欠かせない。だから、俺は今の人々に多くを望まない。又望むものでもない。自分の表現が、自分の中できちんと結実し、理念や美学に、準じていればそれで良いのだ。それ以上、見て下さる人々に責任を押し付けてはいけない。もちろん、俺の作品を既に感じ取っている方々もいらっしゃる。そういう方々は、ある種「特殊」で、その人たちに自分の芸術を理解してもらうためだけに、貴重な時間を使ってはならない。あくまでも、無邪気に、感動したり、理由じゃない場所で、感銘したりする、ごく当たり前の感覚の中にこそ、現代に生きる方々に俺が伝えるべきアートがあるのだと固く信じている。素直な気持ちで物事を見れば、まるで何一つ嘘がないように思う社会。でも、ちょっと、角度を変えただけで、その不本意な下劣きわまりない姿が見えてくる。しかし、そういったもの全てを飲み込んで、作品はインパクトという形で、人の心に入って行かなければならない。これが芸術のまずは第一段階なのだ。しかるに、アーティストもまた、実社会の暗闇と光を見逃さず、実体験と自己認識を持ちながら、どれだけそこから離れ、自己を追求し、自分の世界を作り上げて行くかにかかっている。それは命がけの大仕事なのだ。来年がどうなるか?それは誰にも解らない、ただ、今は、今年より、1ミリでも良くなって行ってほしいと願うばかりだ。社会状況と芸術世界は、それほど近い場所にある事を、意外にも、本職のアーティスト達が解らないでいる事の方が多いように思う。それはメッセージでもアートでもなく、自己満足以外の何物でもない。アートは自己満足とは違う。むしろ、自己から遠く離れた場所での発見である。来年が皆様にとって、素晴らしく、そして精神的にも成長出来る年、穏やかに物事を考えられる年になりますように、心より願っております。感じ取るという事は、本当に尊い人間本来の本能であると信じております。