MIND BBS 〜掲示板〜

「忙殺」とは、恐ろしい。

石井竜也

13.01.07 06:24

人間、逃げ場がなくなったり、又あまりの緊張状態が続くと、考えが大局ばかりを見るようになる。結局は忙しいという事は、スピードを300キロくらい出して走っている最中と変わらないのだろう。結局視界は狭くなり、物事の判断も人間並みじゃ超えられなくなる。自分で自分の荷物を背負い込むというのもあるし、また背負わされるというものもある。自ずと気がつくのが遅いと、自分のイメージには仕上がらない。出来た物を憂うのは、作品への冒涜だと思う。だからその前にとことん、悩んでおくんだ。いくつもの波は容赦なく時間を刻んで押し寄せ、自分の身の置き場さえ、解らなくしてしまう。もっと、素直に自分のやりたい事、やりがいのある事を、率直に、真剣にやれば良いのかもしれない。ところが、その事が余計な負担を他人に課してしまったり、人の時間までも浸食してしまう事が、殆どのこの20~30年。どうすれば、この打開策が見つかるのかを、能率的にも精神的にも考え込んだ時期もあったが、結局、この世界には「近道」はないのに気がつく。そして、誰も責任は取れない。あくまでも、実践する側にその責任はあるわけ。だから、結局、忙しさをごまかす術を会得して行く。「これは忙しく、悩むべき事じゃなくて、最高に楽しい瞬間を繰り返しているのだ」と自分に言い聞かせる事で、なんとか、カンフル剤を打っている。ところがそれさえも効かなくなってくる事がある。それはどういう時にやってくるかというと、あまりにも違う仕事を同時進行させられるとき。・・・ま、誰かに強要される訳でもないし、殆どは自分の蒔いた種なんだけど、随分と種類の違う植物を育てるには、場所も方法も違う土壌が必要になる。だから自ずと、長距離を行ったり来たりせざるを得ない。これだけでも、体にはかなり負担だ。そこに持ってきて、そもそも俺たちの評価は、「ヒット」だの「観客数」だのに置き換えられてしまう。そこにこそ、この世界の落とし穴があると、俺は思い込んでいる節がある。どちらも所詮、捕らぬ狸のなんとやらで、結局、そんな無粋な事を考えて作品の一つ一つを作って行くなんて事をすれば、作品は必ず荒れるし、手抜き工事が始まる。・・・崩れるのも早いという事になる。それが嫌だから、多少無理でも、一歩先を目指す。どんな事も覚悟して、評価とか、他人の判断に身を任せてしまわないように、自分の足下だけを見るように努力するんだ。だけど、これも、そう簡単な事じゃない。あまり入りすぎると、自己満足に陥るし、知っているのに、行くべき場所が分かっているのに、我慢するのも自己崩壊する事になる。かといって天秤にかけてどっちが重いから重要とは限らない。時には軽そうに思われる方のが重要だったりする事もある。・・・怖いです。このドアを開けるなら、覚悟がいります。そこで光が見いだせるとも限らない。物事には一方方向からの見解で決着がつく事なんてのは案外少ない。いろんな位置から、または見る方々お一人お一人のその時の状況などで、評価も変わる。とんでもない場所から見られれば、それでアウトだったりね。この間、スタッフの方に、こういわれた事がある「石井さんは、どうして、セットの裏側まで作るんですか?」俺は、考えた事もなかった事だったので「・・・はあ?」と聞き返してしまった。すると、そのスタッフは、「歌だけでも十分に今の石井さんは輝いていますよ」と言われた。そうなんです。十分にそれは今までも考えた事。歌い手である表現を声におく者は、それだけで十分に、人の心にながしかの感動を作り出せるものです。・・・十分に何年も何年も考えた結果、自分には、作品としてのステージが、空間が、一番あっている「自分の方向である事」を、あるとき悟ってしまった以上、そのスタイルは、変えられない。つまりはネコがイヌにはなれないという事。蛇なら脱皮する事もあるかもしれないが、違う動物に変身する訳じゃない。脱皮しても、蛇は蛇である事に変わりがないように、俺の新しい挑戦とは、今までの延長線上にある。人間は、「こだわり」という天国とも地獄とも取れる精神を持ち合わせている。それを悔やんで違う道を探すのなら、全く違う世界に行かなくてはならない。そこにはゼロからでしか出来ない何もない状態が横たわっている。全くの基礎知識もない場所におかれ、それを実行するには、俺には時間がなさ過ぎる。その場所に行く動機も、必要も感じてはいない。だから今夜も黙々と、作品を作り続けて行くしかないんだな。『遠回り、今見てみれば近い道』お粗末。新年、一句目の心情です。

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