授業参観。
石井竜也
13.01.20 03:17
親が自分の子の成長を確かめられるという物は、何よりも、尊い時間だ。子供はそういう親の態度を見て育つ。俺は、小学校の時にいつも、思っていた、父兄参観なのに、どうしてお母さんしか来ねえんだろ?ってね。俺んちの父親が父兄参観日や運動会、学校のイベントに来た試しがない。一度もないんだ。不思議な事に、それでも親父には来てほしくなかった。だって、お母さんばかりの中に父親が立っていたら、俺は恥ずかしいから。それから、パン食い競争なんか、父親がしている姿を見たくなかった。俺んちの父親はそういうオーラを出していた。だから、石井少年は、学校のイベントはことごとく馬鹿にしていた。程度の低い両親が来るもんだと思っていた。多分、親父が俺に刷り込ませたイメージだ。よく考えれば、親父はそんな時間がなかった。お昼時の忙しい時間に学校なんか来れるはずもなく、親父は、きっと、行けない分、家庭での存在をアピールしていたのだろう。厳しい母親と厳格な祖父母、これでは子供の息がつけない。だから、敢えて、「お父さん、行かなかったからわからないなあ」と言える場所を作っていたのかも?お袋が、父兄参観の日に、俺がペケをやった事を、ニコニコしながら報告を聞く親父の顔は、子供ながらにも、ホッとする表情だった。つまりは、遠くから見る事で、子供の成長の軌道修正を考えていたんだろうと思う。それが父兄参観などの、特別な場所では、判断出来ないと始めから否定派だったんだ。つまりはお袋は、その一瞬の俺たち兄妹を監視するスパイとして送り込まれた存在だったんだ。親父は、その結果があんまりの時には、必ず、海辺のレストランでオムライスを食わしてくれた。・・・何も言わずにね。