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GROUND ANGEL 2002-2011の
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SPECIAL2 〜特別企画2〜
Chapter2. 自然災害は力を出し合えば復興できる。でも…
石井 僕は親父から、北茨城市は文化の町なんだと習いました。もちろん漁師の町でもあるけども、ここで日本芸術院ができて、岡倉天心や横山大観、石井柏亭が出て、芸大ができたんだって。それと六角堂も、絵を描くためだけに作ったわけじゃなくて、岡倉天心が、この辺りは船の遭難が多いから、ここに灯台のようなものを作って、光が見えれば、少しでも助かるんじゃないかといって作ったと、俺は小さい頃から教わって育ってきたんです。その六角堂が、親父が愛して愛して愛して毎日のように描きに行っていた六角堂が、今回の津波で消えてしまったわけですよ。その様子を見た時は、新聞を抱いて泣きました。
市長 今年いっぱいくらいで、茨城県と調整して、修復しようとしているんです。現在は海に落ちているんです。まずはそれを引き上げなくちゃなりません。今の六角堂は3代目くらいなんですが、運よく初代の設計書が見つかったので、それで修復しようということになってますから。
石井 そうなんですか! 僕宣伝しますよ。あの中で絵を描きますよ。
市長
多分石井さんも小さい頃に遊んだと思うんですが、隣のいわきの豊間の灯台。今は何も無いですよ。植田の火力発電所のあたりの綺麗な海岸線も、防波堤が10mくらいあったんですが、瓦礫状態で。その内側にあった2-300軒の家屋は一軒も無いです。
石井
結局、東北と言われているこの地区の人間は、故郷をどう守ってきたかというところにプライドをもっていると思うんです。その原風景が無くなるというのは、泣いても泣ききれないくらいの傷だと思うんです。
市長
以前石井さんに書いてもらった北茨城市のお祭りのポスター。そこに描いて頂いた二ツ島ですが、今回の地震で左側の大きな島が3分の1になっちゃった。
石井
崩れちゃったんですか!? やっぱり…。
市長
右側はほとんどなし。
石井
あぁ…
市長
だからこの絵は貴重ですよ。そんな風に北茨城もなってしまった。ただね、ただですよ。自然災害は復興できますよ。力を出し合えば。
石井
ある意味ではしようがないという諦めもつきやすい。
市長
ただ原発は駄目です。原発は問題ですよ。
石井
俺が一番頭に来るのはね、あの原発の電気がその地元で使われているならまだいいんですよ。
市長
東京ですからね。
石井
ただ人口が少ないからっていって、危険なものを誘致する、こういうものの考え方はどうなんだろうと、いつごろからこういう考え方に日本人はなっちゃったんだろうと思いますね。
市長
地域の活性化ということに踊ったんですよ。首長が。つまり知事が、市長が、お金に目がくらんだんですよ。北茨城市は1年間で150億くらいの予算なんです。ところが小さい町は30億50億です。その倍も3倍もくれるというんですから。税金も安くなりますし。電気料が月7000円~1万円くらい値引きされるわけです。そういうところに、首長が目がくらんだ、ということは事実です。
石井
目がくらむのは当たり前で、俺は悪いことではないと思います。誰だって苦しい生活をしていたら、そんなものをぶら下げられたときに、少しでも欲しいと思うのは当たり前ですよ。それをぶら下げる方が悪いです、やっぱり。人の痛いところをついてきて、いいようにコントロールするという、そんなやり方がこの時代においてされてたんだというのが驚きですよね。
市長
それが現実かもしれませんよね。
石井
原子力発電所が55基も日本にあるということを、今まで日本人の何人がわかっていましたかね。普通だったら1基作るのにも“ここに作りますよ”と日本全国の人にふれまわって然るべきじゃないですか。“作っていいですか?大丈夫ですか?”って。それだけ危険なものなんですから。だけど実際は何一つわからない状況のなかで原発が増えていったと。
市長
津波の想定が低いんですよね。なんで30mにしないかと。想定外だなんてふざけるんじゃないと。それは現実に想定しておかなきゃいけません。
石井
別に今まで高い波が来ていないわけではないんですよ。じいちゃんから山の上まで来たって聞いたよ、って言っている人はいっぱいいるわけですよ。だからそういうこともありうると研究者も絶対わかっていたはずなんです。ああいう説明の仕方は、ものすごく馬鹿らしいですよね。
市長
原子力安全委員会も、昔は通産省(現・経産省)のなかにあって、東京電力に天下りの連中がいるんだから。最近は正義の味方みたいに来てるけど冗談じゃないんです。
石井
IAEAにしたって結局原子力推進派を擁護するための世界団体で、どんどん作っていってほしいわけですから、来て見て“これは大丈夫”というのは当たり前で。ウランで儲けている人達が集まって、ここはいいだの悪いだのいう権利はないですよ。裁判だって、弁護士がいて検事がいて、中立の裁判官や今だったら裁判員がいて初めて成り立つわけじゃないですか。原発に関しては、そういう図式が成り立ってないですよね。推進派だけの一人舞台になっている。
市長
原発は相当秘密主義にやってるんでしょうね。EUの方々が3月末頃に北茨城に来たんです。EUですから20何カ国の代表の原子力委員の大臣なんですが、そのブルガリアの女性環境大臣が五浦美術館のところから原発を見て、そこから動きませんでしたからね。EUでは原発の80キロ以内には行かないんですよね。日本では20キロとか30キロとかという話をしているでしょ。
石井
ヨウ素やセシウムは100キロ200キロと飛びますからね。
市長
今日もコウナゴのセシウムが若干高くて出荷停止になってしまいました。
石井
ここまできたら天気予報でも、風の向きや放射線の量をきちんと出すべきですよね。
市長
気象庁も今回の地震で間違ってるんですから。震度計の設置場所は地盤がいいので震度4強だったんです。しかし磯原にいくと地盤が悪いから震度5強なんです。設置している場所で違いますからね。安心安全が根本から崩れている。
石井
知り合いの外国人が、最初に福島原発を中心に描かれた10キロ20キロの円を見て、「こんなに綺麗な丸になるわけない」と。風はいろんな方向に飛んでいるし、いろんな方向に行っているはずだと。こんなきれいな丸で囲んでここから出ろというのはおかしいと。であれば2000カ所でも3000カ所でもちゃんと計測して、1日で200人くらいでやればできるというんです。
市長
簡単に測れますからね。これはEUの人達が持ってきてくれた放射線量を測る線量計です。最近枝野さんも修正されたけれども、福島の飯館村がおかしくなっちゃったのは、早く知らせてやらなかったからなんですよね。いわきなんて当時すごかったですよ。放射線が怖くて避難者でここから水戸までずっと車が連なって。いわき市の平まで行ってみたら、上りは全部車がつながっていて、下りは電気も何もなし。平の賑やかな町が一瞬にして何もなし。町が無くなる感じがして、それはそれは淋しかったです。
- Chapter1. 郷土の文化を理解したうえでの復興支援を
- Chapter2. 自然災害は力を出し合えば復興できる。でも…
- Chapter3. 支援物資より何より、まず心が欲しい
- Chapter4. 原風景は今 ~石井竜也 in 北茨城~
- Chapter5. 現場からの声~北茨城市でのボランティアに参加された方のメールより~