SPECIAL 〜特別企画〜

Chapter6. チェルノブイリの救援経験から、これからの日本に必要なこと

石井  日本だけですもんね。夜に宇宙から写真を撮ると、暗闇の中で日本の形のまま残っているのって。いらないですよね、そんな。


広河  今の節電している状態くらいがちょうどいいと思います。


石井  俺もそう思います。


広河  気持ちがちょっと休まる。今までみたいにあんなに照らす必要はない。どんどん電気を使え使えと、オール電化で、だから電力が必要だというキャンペーンもしてきたけれども、今回の件で無くてもいいんじゃないかとみんな思い始めてるんじゃないですかね。


石井  思い始めていると言うか、後悔になってきてるんじゃないですかね。でも今回初めてでしょう、一般の人が日本に何個原発があるかを認識したのは。


広河  しかもどれだけ恐ろしいか、手に負えないかってこともね。


石井  こんなにも恐ろしいもので、こんなにも影響力のあるものだと今やっと分かって、そんなものが55基もあったんだっていう事実が初めて分かったんじゃないかなと思って。


広河  藤波心さんという女の子のブログが話題なの、読みました? 14歳のアイドルの子なんですが、その子が書き連ねていく言葉が、全部的を射てるんです。学者だろうがアナウンサーだろうがキャスターだろうが、そんな連中が見たら顔を赤くするような、そんな文章ですよ。14歳の彼女はブログに書けるんです。でもあの連中はくだらない嘘を言っていてだましているつもりになってるんですよね。今一番強いのは、普通の人の「どうして?」という気持ちなんです。


石井  そうですよね。だって子どもが考えたって、原子力爆弾ってすごい爆弾だったんでしょ?なのになんで原子力なの?って、そこですよね。


広河  両方放射能が出ますからね。


石井  巨大なクエスチョンですよね、これは。両方同じなんてことはガキでもわかることを、必死にたくさんの言葉で繕うわけですよ。どっちが嘘をついているかなんて一目瞭然ですよね。でもどうですか、以前から懸念していた事が、実際起きてしまった気持ちというのは。


広河  唖然としたのは、僕は絶対事故が起こると思っていたし、津波で原発がやられるという講演会までしてしきりに言っていた人間じゃないですか。しかし実際に事故が起こった時には、役に立たないレベルの振り切れてしまう検知器しか持っていないわけですよね。本当に起こったらどうするかという実際の準備を自分では何もやっていなかった。本気でやるんだったら、皆で集まって鉛の車を作って、それで移動なんかもして、NGOでもつくって食品検知器にしろ、放射線検知器にしろ、何百台と周囲に配置しなきゃいけなかった。それくらいやって初めて何を食べて大丈夫か、どこに逃げたらいいのか、どうしたらいいのかと対策ができて、ほんのちょっとでも助かるかもしれない。でも実際起こったら、何もできていなかったことに呆然としましたね。


石井  広河さんはこれからやっぱり原発を中心に見ていく感じですか?


広河  チェルノブイリの救援活動を長くしてきて、今回その経験が役立つ救援の方法というのはあるんですね。こういうときにはまずバラバラになるのが怖いんです。あれだけ被ばくした人達がバラバラになると追いかけられない。早期発見で助かる命もあるわけですね。こんな時期に助かるとか死ぬとか言うと不謹慎だと言われるかもしれないけど、だけど健康のためには絶えずチェックできるようにしておかないといけないんです。そのためにはその人たちがどこに行ってどうなったかということを国が助成して、心配なく手当を受けられるようにしておかなきゃいけない。そういうシステムをつくることが大事です。それとこれから一番必要なのは食べ物の放射能を測る機器です。チェルノブイリでも2~3年はそれが無かったんですが、体内被ばくをどうやって避けるかは大切です。今からこれを食べようと思う時にすぐ食品検知器に食べ物を置いて30分たったら測れますからね。そういう機器がいろんなところにあって気楽に使えるようにしていかないと。これは危険だけどこっちは安全だとはっきり知ることが大事なんです。今は危険な情報だけを伝えていて、全部が危険みたいになってしまうじゃないですか。


石井  必要ですよね、命にかかわるものだからこれからの日本には必要なものですよ。おそらくこれから50年くらいは。


広河  それと放射能検知器を皆が使って、30分ごとにインターネットで報告し合うようになれれば。


石井  そのシステムが携帯についていて、GPSで連動してどこでも日本全体のデータがわかるようになるといいですね。


広河  今の数万倍恐ろしい事が起こったとしても、後になって“あのときこうしておけばよかった”と思わないように、今できることをやりたいです。


石井  まだ諦めるのは早いですからね。

~アクセスして頂いた皆様へ~

2011年4月9日に広河隆一さんにインタビューをし
それから数日が経過する間にも、刻々と変化する今の状況において
確実であると思われる情報を選定して掲載させて頂きましたが、
現状では、このご報告が精一杯です。

これを発信できたときには、全てが収束に
向かっているといいのですが・・・。

現実そう、甘くないようです。
広河さんの意見も私の意見も、
個人の意見に過ぎません。

もっともっと、真実を知るためには
現地に行って調べるしかないのです。
広河さんと違い、俺の場合は、
役割が違うと、ちゃんと理解しているつもりです。
どうか、ご容赦を・・・。

石井竜也