SPECIAL 〜特別企画〜

Chapter2. 今こそ原発反対派と、賛成派と、中道派とがテレビで討論してほしい

石井  僕の3つ上のいとこが、福島県の原発から40キロ圏内に入っている小学校で校長先生をやっているんです。そこは今回避難所になっていて、相馬市から避難してきた人達を受け入れているらしいんですね。この間ニュースでちょうどそのいとこが出ていたんですが、明るい人だったのに、悲痛というか無表情というかそんな顔で映っていて、「子どもたちを絶対に笑顔にさせてみせますので」って言ってましたけどね。


広河  どこの町ですか?


石井  確か三春…


広河  桜の木が有名なところですか?


石井  そうです、そうです。


広河  僕そこに泊っていたんです、ずっと。


石井  彼の家族は山形へ避難しているようなんですけど、自分は校長先生なのでそこにいると。原発から40キロっていったって、おそらく風の向きでね。濃くなるところも薄くなるところもあるだろうし、心配な場所ですよね。


広河 あっちの方向には飛んでますよ。飯舘村、三春町、福島市まで、放射線測定器で測りながら行ってたんですけど、相馬の海岸寄りではあまり数値が上がらなかったんです。もう風向きが変わって大丈夫なんだ、とリラックスして帰ってきたんですよね。伊達市の南の端のところに十字路があって、そこでお店が開いていたから食事をとって、何気なくスイッチを入れたら、針がほとんど振り切れたんですよ。5~60キロくらい離れているところで。そこから念のためにと移動して、飯舘村に入ったら振り切れちゃった。僕の放射線検知器って、チェルノブイリでも振り切れた事はめったにないんです。


石井 あれだけ爆発していて振り切れないわけがない気もしますよね。素人目で見ても、あんな事が起こっているのに、原発推進派のトップでやっていたような人間が「大丈夫です」なんて言ったって安心できないですよ。今こそ反対派と、賛成派と、中道派とが、ちゃんとテレビの前で喧嘩してほしいですよね。そしてどれを信用するかしないかは個人個人の自由であって、まずはどちらの意見も見せるべきなんです。


広河 今まで一所懸命推進していた人たちが安全だと言ったって、そう思いたいのは分かるけれども、「想定外」と言ったって、反対派の人達も中道派の人達も、地震学者達も、絶対起こるから危ないと言っていたわけですから。その人たちは想定していたんですよね。想定外にしているのは、あの人たちが想定された考えを受け入れなかっただけです。


石井 賛成派だった人が想定外と言っても、よっぽど甘い想定をしていたようにしか思えないですよ。一般の人にだってわかりますよ。だって40年だったわけでしょう?原子炉の使用期限は。だったら30年目の時点で、40年を10年後に控えているので止めますといった報告があったっておかしくないはずじゃないですか。それを40年経って、あと20年大丈夫ですって、じゃあまたその60年が終わったら、また延ばすのかという話ですよね。しかも福井県にあるものってほとんど同じような構造物でしょ。これは…国という体を成していないですよね。


広河 都合の悪い事は隠そう、少々被害者がでても見捨てよう、出なかった事にしよう、安全だった事にしよう、しばらくすると人々は散り散りばらばらになってしまうから、やがてどこかで発病したとしても、素知らぬふりができるという。


石井 チェルノブイリでさえが、共産国家でさえが、お金もそんなに持っていないだろうに、爆発後早いうちに避難勧告を出したわけじゃないですか。以前拝見した広河さんの写真で、チェルノブイリの近隣の家の部屋で、今さっきまで勉強していたような机が写っていたのが印象的で、まだ僕の頭に残っているんですけど…あのくらい急な状態で避難したわけですよね。俺偉いと思うんですよ。事故は愚かしくても、人をまず助けようと思ったソ連は偉いなと思って。


広河 13万人強制避難させましたからね。


石井 日本だって普通だったら妊婦と子どもだけでも、何万台使ってもトラックでも何でも構わないからあそこから出せというのがまず政府のやるべき事じゃないですか。視察とかの問題じゃないですよね。爆発したその瞬間に手配をまずしなきゃいけないのが、国を動かしている政治家の仕事なんじゃないかと俺は思うんです。


広河 隠し続けてね…放射能が上がった時には絶対に伝えない。それが下がってから、一時上がりましたが下がりましたと伝える。彼らの言い分は、上がった時に言うと皆がパニックになるということだろうけど、上がってる時に皆が逃げなきゃ。被ばくした後で「実は昨日…」と言ったって意味が無いですよ。


石井 放射線測定器なんて、素人が見たってまずいことが起こっていることくらいすぐに分かりますしね。


広河 僕が持っていったのはこれなんですけどね、いろんなタイプがあって、僕がチェルノブイリでも使っていた大きい方は、100マイクロシーベルトまでしか測れないんですが、今は小さくても1000マイクロシーベルトも測れるものもあるんです。


石井 これは買えるんですか?


広河 今は日本にあったものは全部買い占められていてしまっていて、アメリカから輸入するかですね。もう少しでフランスの企業が、日本語表示にした測定器を発売するようです。一家に一台の時代ですよ。


石井 今日あたり雨ですけど東京はどうなんですかね。


広河 さっきスイッチを入れてみたんですけどね、0.01マイクロシーベルトの目盛りよりも低いです。これが平均なんです。


石井 外国の報道を見ていると情けなくなりますよ、日本の報道が。どう贔屓目に見ても、CNNやBBCのほうは嘘をついているように見えないんですよね。信憑性があるように感じてしまって。外国のニュースだと100キロ圏内の話をしていますよね。確かに2〜30キロ圏内っていうけれども、きれいな同心円になんかなってないでしょうから、風の向きでいろんなぐしゃぐしゃな形になるでしょうしね。


広河 名古屋くらいでも雨が降るかもわからないですよね。


石井 雨の量も雲の厚さで違うわけですからね。相当場所によってはとんでもないところが東京内でも出てくるんじゃないかなという気がするんですよね。


広河 チェルノブイリから100キロ離れたところにキエフという街があって、そこは一応安全ということになってるんだけど、測るとすごく高いところがあったりするんです。平均して低いとなっていても、いっぱいホットスポットはあるらしいですよ。